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空き家だけ相続放棄はできるか|期限は3か月・収入印紙800円と、放棄したあとに残る管理義務

古い木造住宅の玄関。すりガラスの引き戸と、チラシがはみ出した木の郵便受け、足元に散った落ち葉

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「親の預金は少し受け取りたい。でも古い実家だけは引き継ぎたくない。空き家だけ相続放棄はできるのか。放棄したあとの管理義務はどうなるのか」

相続放棄は、家庭裁判所に申し出て「最初から相続人ではなかったこと」にしてもらう手続きです。裁判所は相続放棄を「権利や義務を一切受け継がない」手続きとして説明しています。
実家だけを外して放棄する、という選び方は案内されていません。

期限3か月以内自分のために相続が始まったと知ったときから 費用800円収入印紙(申述人1人につき)+郵便切手 2025年(令和7年)の申述32万件新受323,524件(司法統計)

しかも、放棄の時に実家を現に占有していた人には、放棄のあとも次の人に引き渡すまで家を保存する義務があると民法に定められています。
「放棄すれば空き家の心配から完全に離れられる」とは限らないため、期限の3か月のうちに、放棄以外の道も並べて比べることになります。

家だけ放棄できるか

相続放棄は、預貯金も借金も含めて一切を受け継がない手続きです

どこに申し出るか

被相続人(亡くなった人)の最後の住所地の家庭裁判所です。自分の住所地ではありません

放棄したら終わりか

放棄の時に現に占有していた人には、引き渡すまで保存する義務が残ります(民法第940条)

この記事でわかること
  • 相続放棄で実家だけを外せない理由と、放棄の効果(民法第939条)、申述件数の推移
  • 3か月の期限の数え方と、期限を延ばす申立て(期間の伸長)
  • 申述先・費用・必要書類(相続の順位ごとに変わる戸籍の範囲)
  • 放棄の前にしてはいけないこと(相続財産の「処分」=民法第921条)
  • 放棄のあとも残る「保存」の義務と、2023年(令和5年)4月の民法改正で変わった点
  • 全員が放棄したときに実家がどうなるか(次の順位の相続人・相続財産清算人)
  • 放棄・売却・解体・相続土地国庫帰属制度(相続した土地を国に引き取ってもらう制度)の比べ方
目次

空き家だけ相続放棄はできるか|相続放棄は「一切を受け継がない」手続き

できない、と考えておくのが安全です。裁判所は相続放棄を、プラスの財産も借金も含めて「権利や義務を一切受け継がない」ものとして説明しています。

民法第939条は、放棄の効果を「その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」と定めています。相続人でなかったことになるので、預貯金を受け取りながら家だけを外すことはできません。
相続財産の一部だけを放棄できると定めた条文も、民法には見当たりません。

「実家は要らないが、預金は欲しい」場合、相続放棄は使えません。
その場合は、相続したうえで家を売る・解体する・国に引き取ってもらうといった別の道や、ほかに相続人がいれば遺産分割の話し合いで実家を引き継がない形を検討することになります。比べ方は、この記事の後半で表にまとめます。

相続放棄の申述は年々増えている

最高裁判所の司法統計(令和7年 司法統計年報 家事編)によると、相続の放棄の申述の受理の新受件数(家庭裁判所が受け付けた件数)は次のとおりです。

表は横にスクロールできます

年新受件数
2023年(令和5年)282,785件
2024年(令和6年)308,750件
2025年(令和7年)323,524件

※最高裁判所「司法統計」の令和7年版の同じ表の数字です。前年版(令和6年版)では2024年の件数が308,753件と載っており、版によって数字がわずかに違います。2025年に処理が終わったもの(既済)323,521件のうち、認容(受理されたもの)は316,286件でした。

公的な建物の広いロビー。並んだ長いすと受付カウンターがあり、奥の大きな窓から光が入っている

期限は3か月|「知ったとき」から数える

民法第915条は、相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」に、相続を承認するか放棄するかを決めなければならない、と定めています。

裁判所のQ&Aは、この「知ったとき」を、亡くなったことと、それによって自分が法律上の相続人になったことを知ったときと説明しています。亡くなった日から一律に数えるわけではありません。

裁判所のQ&Aには、次の書き方もあります。
「相続財産が全くないと信じ,かつそのように信じたことに相当な理由があるときなどは,相続財産の全部又は一部の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば,相続放棄の申述が受理されることもあります。」
「受理されることもあります」という書き方で、必ず認められるとは書かれていません。3か月を過ぎてから実家の存在を知った、という場合は、当てはまるかどうかを家庭裁判所に確かめることになります。

3か月で決めきれないとき|期間の伸長の申立て

財産の調べがつかず3か月で決められないときは、家庭裁判所に期間を延ばしてもらう申立てができます(民法第915条ただし書き)。

  • 申し立てられる人:利害関係人(相続人を含む)と検察官
  • 申立先:被相続人(亡くなった人)の最後の住所地の家庭裁判所
  • 費用:収入印紙800円分(相続人1人につき)と連絡用の郵便切手
  • いつまでに:裁判所は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にする必要があります」と書いています。3か月を過ぎてからでは、延長の申立ては使えないと当サイトは読んでいます

2025年(令和7年)の期間の伸長の新受件数は10,318件でした(司法統計)。

申述の手続き|申述先・費用・必要書類

相続放棄は、書類をそろえて家庭裁判所に「申述」(書面で申し出ること)します。裁判所のページが示す要点は次のとおりです。

  1. 申述人を確かめる放棄するのは相続人本人です。相続人が未成年者または成年被後見人のときは、法定代理人が代理して申述します
  2. 申述先を調べる被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。自分の住所地ではありません
  3. 戸籍などをそろえる自分が何番目の相続人かで、集める戸籍の範囲が変わります(下の表)
  4. 申述書を出す裁判所のページにある書式と記載例を使います。収入印紙800円分(申述人1人につき)と連絡用の郵便切手を添えます
  5. 受理されたら裁判所Q&Aは、受理されると「最初から相続人ではなかったことになります」と説明しています

郵便切手の額について、裁判所は「郵便料は裁判所ごとに異なります」と書いています。申述先の家庭裁判所のページで確かめることになります。

必要書類|相続の順位で戸籍の範囲が変わる

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申述する人共通の書類に加えて必要なもの(裁判所のページから)
全員に共通被相続人の住民票除票又は戸籍附票/申述人(放棄する方)の戸籍謄本
配偶者被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
子・孫など(第一順位)被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本。孫などが代わりに相続する場合は、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本も必要です
父母・祖父母など(第二順位)被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本など(先の順位の相続人などから提出済みのものは添付不要)
兄弟姉妹・おいめい(第三順位)被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本など(同上)
子が放棄して、次に親やきょうだいが放棄を考える場合は、集める戸籍が一気に増えます。裁判所は、先の順位の人が出した書類は添付不要と書いています。家族で順に放棄するときは、誰がどの戸籍を出したかを共有しておくと、同じ戸籍を取り直さずに済みます。
また裁判所は、戸籍等に代えて「法定相続情報一覧図の写し」を提出できる場合がある(申述する家庭裁判所に確認)とも書いています。

放棄の前にしてはいけないこと|「処分」をすると放棄できなくなる場合がある

放棄を考えている期間に特に気をつけたいのが、相続財産を「処分」してしまうことです。

民法第921条第1号
条文は、相続人が「相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。」には、相続を単純に承認した(借金も含めて受け継ぐと決めた)ものとみなすと定めています(法定単純承認)。
承認したものとみなされると、そのあとで放棄することはできなくなります(民法第919条第1項は、相続の承認及び放棄は「撤回することができない」と定めています)。

条文は、処分にあたらないものとして保存行為(財産の価値を保つための行為)と、短い期間の賃貸を挙げています。一方で、何が「処分」にあたるかを行為ごとに並べた一覧は、条文にも裁判所のページにもありません。

そのため当サイトは、放棄を考えているあいだに次のような行為に進む前に、弁護士・司法書士に確かめることを勧めます。条文や裁判所が挙げた例ではなく、当サイトが注意を勧める例です。

  • 実家を売る契約をする:相続財産を手放す行為です
  • 実家を解体する契約・工事をする:建物を取り壊す行為も、財産の形を変えるものです
  • 家財や遺品を売る・人にあげる:相続財産の一部を手放す行為です

放棄したあとの行為にも決まりがあります。第921条第3号は、放棄をしたあとでも、相続財産の全部か一部を隠したり、自分のために使ったり、わざと財産目録に書かなかったりしたときは、単純承認したものとみなすと定めています(ただし、放棄によって相続人になった人が承認したあとは除かれます)。

条文は「処分」の中身を並べていないため、査定や見積もりについても条文には書かれていません。
一方で民法第915条第2項は「相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。」と定めています。売ったらいくらか、壊したらいくらかを知ることは、当サイトはこの調査に近い材料集めだと考えています。ただし、そこから契約や工事に進むと話が変わる可能性があるため、金額を知るところまでにとどめて、放棄するかを決めてから次に進むのが安全です。
壁掛けカレンダーのある部屋で、机に広げた手帳にペンで書き込んでいる手元

放棄しても空き家の心配が消えるとは限らない|民法第940条の「保存」

放棄が受理されても、実家との関わりがその日に切れるとは限りません。民法第940条第1項は、放棄した人に次の義務を定めています。

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条文の要素民法第940条第1項の文言
誰が相続の放棄をした者
どの場合に「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」
いつまで「相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間」
何を「自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」

ポイントは「現に占有しているとき」という限定です。放棄したすべての人に同じ義務がかかる書き方にはなっていません。自分がその家を占有していたといえるかどうかで扱いが変わりますが、何が占有にあたるかの例は、条文にも法務省の説明にも示されていません。判断に迷うときは、弁護士・司法書士に確かめることになります。

2023年(令和5年)4月1日の改正で何が変わったか

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項目第940条の書き方
改正前放棄した人は「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで」財産の管理を継続しなければならない
改正の理由(法務省)「管理継続義務の発生要件や内容が明らかでないため、相続の放棄をしたのに過剰な負担を強いられるケースも。」
改正後(法務省の説明)「相続の放棄の時に現に占有している相続財産につき、相続人(法定相続人全員が放棄した場合は、相続財産の清算人)に対して当該財産を引き渡すまでの間、その財産を保存しなければならないことを明記」
改正で、義務がかかる場面が「現に占有している」ときであることと、いつまで続くか(「引き渡すまで」)が明記されました。
ただし、占有していた人は、次の相続人や相続財産の清算人に引き渡すまで保存を続けることになります。全員が放棄して清算人が選ばれるまでのあいだ、実家の傷みや周りへの影響に気を配る状態が続くことがあります。

全員が放棄したら実家はどうなるか|次の順位の相続人と、相続財産清算人

次の順位の人が相続人になる

放棄した人は、民法第939条によって初めから相続人でなかったものとみなされます。そのうえで、相続人になる順番は民法に決められています。

  • 第887条:「被相続人の子は、相続人となる。」
  • 第889条第1項:子などの相続人がいない場合には、①被相続人の直系尊属(父母・祖父母など)、②被相続人の兄弟姉妹の順位で相続人となる

この2つの条文を合わせると、子が全員放棄すれば父母などが、父母などもいないか全員放棄すれば兄弟姉妹が相続人になるという流れになります。
なお、民法第887条第2項が、子の代わりに孫が相続人になる場合として挙げているのは、子が相続の開始以前に亡くなったときや、欠格・廃除で相続権を失ったときです。子が放棄した場合は挙げられておらず、孫が代わりに相続することはありません。裁判所の必要書類の説明が、第一順位から第三順位まで分かれているのもこのためです。

自分が放棄すると、実家の問題が、自分のきょうだいや、亡くなった親の親・きょうだい(自分から見て祖父母・おじ・おば)に移ることがあります。
次の順位の人は、自分が相続人になったことを知ったときから、同じように3か月の期限で承認か放棄かを決めることになります。放棄するつもりなら、次の順位になる親族に早めに伝えておくと、戸籍の取り直しや期限の行き違いを防げます。

相続する人が誰もいなくなったとき|相続財産清算人

全員が放棄して相続人がいなくなった場合、財産を整理するのは相続財産清算人です。裁判所は「相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる」としたうえで、「家庭裁判所は,申立てにより,相続財産の清算人を選任します。」と書いています。
誰かが申し立てないと清算人は選ばれず、放棄の時に実家を占有していた人は、引き渡す相手が決まらないまま保存を続けることがあります。

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項目裁判所のページの記載
申し立てられる人利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)、検察官
申立先被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
費用収入印紙800円分、連絡用の郵便切手、官報公告料5,582円(国の広報紙「官報」に載せる費用。家庭裁判所の指示があってから納める)
予納金(前もって裁判所に納めるお金)管理に必要な費用に不足が出る可能性がある場合、申立人に相当額を予納金として納付してもらうことがある(金額の記載なし)

清算人が整理しても残った財産は、民法第959条により「国庫に帰属する。」とされています。

放棄以外の道と比べる|売る・解体する・国に引き取ってもらう

実家だけを手放したい場合、相続放棄は「全部を受け継がない」手続きなので、目的と合わないことがあります。ほかの道と並べると次のとおりです。

表は横にスクロールできます

方法実家以外の財産主な費用気をつけること
相続放棄預貯金なども一切受け継がない収入印紙800円分(申述人1人につき)+郵便切手+戸籍の取得費3か月の期限。放棄の時に占有していた人には保存の義務が残る
相続して売る受け継ぐ相続登記の費用、仲介手数料など売れるまでの管理。売るには相続登記が必要
相続して解体する受け継ぐ解体費用(市区町村の補助金が出ることがある)更地にしたあとの土地の扱いを先に決めておく
相続土地国庫帰属制度受け継ぐ審査手数料 土地一筆当たり14,000円+負担金(面積にかかわらず20万円。一部の市街地の宅地などは面積に応じて算定)「建物がある土地」は申請できない=先に解体が必要。ほかにも担保権がある土地、境界が明らかでない土地などは申請できず、却下・不承認でも審査手数料は返還されない
相続土地国庫帰属制度の負担金について、法務省の資料は「面積にかかわらず、20万円」を基本としつつ、一部の市街地の宅地、一部の市街地や農用地区域等の田・畑、森林は面積に応じて算定するとしています(宅地100㎡で約55万円の例)。「どの土地も20万円」ではありません。
売る場合は、法務省も「相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、相続登記をする必要があります」と書いています。手順は相続登記を自分でやる手順の記事、解体・売る・貸す・持つの全体像は空き家をどうするかの記事、解体の相場は解体費用の相場の記事で扱っています。
雨戸を閉め切った瓦屋根の木造住宅と、雑草が伸び始めた庭。曇りの日

放棄を決める前に、売れるか・壊すといくらかを知る|一括査定と一括見積もり、自分で業者を探すときの確認点

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  • 向く人:解体費用がいくらになるか分からないまま、放棄を考え始めている人
ここは注意
  • 公式は「現地測量後、見積もり結果を最短即日でご提出します」と説明しています。金額が出るのは現地を測ったあとで、立ち会いが必要かどうかは申し込みの段階で確かめることになります
  • 見積もりを取ることと、解体の契約や工事を進めることは別です。放棄を考えているあいだに相続財産の処分にあたる行為をすると、放棄ができなくなる場合があります(この記事の「放棄の前にしてはいけないこと」の章)
  • 補助金の有無と条件は市区町村ごとに違います。「申請実績3,500件以上」は件数で、自分の市に補助金があるかどうかは別に確かめることになります

地元の会社に直接頼む場合|放棄の期限があるときに確かめる3つ

一括のサービスを使わず、地元の不動産会社や解体業者に直接聞く道もあります。放棄の期限が迫っているときは、次の3つを先に確かめておくと話が早く進みます。

  • 「査定」と「売却の依頼」を分けて頼めるか:放棄を決めていない段階では、金額の見当をつけるだけにとどめる、と最初に伝えておきます
  • 解体は「見積もり」までか:契約や着工の日取りまで話が進まないよう、見積書だけを出してもらいます
  • いつまでに数字が出るか:相続放棄には期限があります。回答の日付を先に聞いておくと、期限との前後関係が分かります

市区町村ごとの業者と補助金の実額は、地域別の記事で順に取り上げます。

よくある質問

3か月を過ぎてしまいました。もう相続放棄はできないのですか?

原則は、相続の開始と自分が相続人になったことを知ったときから3か月以内です(民法第915条)。
ただし裁判所のQ&Aは、相続財産が全くないと信じ、そう信じたことに相当な理由があるときなどは、財産の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば受理されることもある、と書いています。「受理されることもあります」という書き方で、必ず認められるわけではありません。当てはまるかどうかは、申述先の家庭裁判所に確かめることになります。

相続放棄の手続きにかかる費用はいくらですか?

家庭裁判所に納めるのは、収入印紙800円分(申述人1人につき)と連絡用の郵便切手です。郵便切手の額は裁判所ごとに異なります。
このほか、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本などを市区町村で取る手数料がかかります。第二順位・第三順位の人が放棄する場合は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍が必要になるため、取り寄せる通数が増えます。

全員が放棄したあと、相続財産清算人の申立てにはいくらかかりますか?

裁判所のページによると、申立てに必要な費用は収入印紙800円分、連絡用の郵便切手、官報公告料5,582円です。申し立てられるのは利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)と検察官です。
このほか裁判所は、相続財産の内容から管理に必要な費用に不足が出る可能性がある場合、申立人に相当額を予納金として納付してもらうことがある、と書いています。予納金の金額はページに示されていません。

放棄を考えている間に、実家の片付けや遺品の整理をしても大丈夫ですか?

相続財産の全部または一部を処分すると、相続を単純に承認したものとみなされ、放棄できなくなる場合があります(民法第921条第1号)。条文は、保存行為と短い期間の賃貸は処分にあたらないとしています。
何が処分にあたるかを行為ごとに示した一覧は、条文にも裁判所のページにもありません。価値のある家財を売ったり、人にあげたり、家を解体したりする前には、家庭裁判所や弁護士・司法書士に確かめるのが安全です。

子どもが全員放棄したら、実家は誰が相続するのですか?

放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされ(民法第939条)、民法第889条第1項の順位に従って、被相続人の直系尊属(父母・祖父母など)、その人たちもいなければ兄弟姉妹が相続人になります。
次の順位の人も、自分が相続人になったことを知ったときから3か月以内に承認か放棄かを決めることになります。全員が放棄して相続人がいなくなった場合は、利害関係人などの申立てを受けて家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人が財産を整理します。

放棄するか決める前に、売却の査定や解体の見積もりを取ってもいいですか?

民法第921条は相続財産の「処分」を法定単純承認の一つに挙げていますが、何が処分にあたるかは並べておらず、査定や見積もりについても書かれていません。第915条第2項は、承認や放棄の前に相続財産の調査をすることができると定めています。売ったらいくらか、壊したらいくらかを知ることは、放棄するかどうかを決める材料になります。
ただし、査定や見積もりから売買の契約や解体の工事に進むと、処分にあたるかが問題になる可能性があります。放棄を決めるまでは、金額を知るところまでにとどめておくのが安全です。

まとめ|放棄は「全部を手放す」手続き。3か月のうちに他の道と比べる

この記事の結論

相続放棄は「権利や義務を一切受け継がない」手続きで、実家だけを外すことはできません。期限は自分のために相続が始まったと知ったときから3か月以内、費用は収入印紙800円(申述人1人につき)と郵便切手です。放棄の前に相続財産を処分すると放棄できなくなる場合があり、放棄の時に実家を現に占有していた人には、放棄のあとも引き渡すまで保存する義務が残ります。

期限のうちにしておく3つ

① 期限の起点を確かめる

いつ「知った」ことになるか。決めきれないなら、3か月以内に期間の伸長を申し立てます

② 処分に進まない

売る・壊す・遺品を売る前に、弁護士・司法書士に確かめます

③ 他の道の数字を集める

売ったらいくらか、壊したらいくらか。査定や見積もりは、金額を知るところまでにとどめます

① 財産と期限を確かめる実家以外の財産も含めて
▶
② 放棄と他の道を比べる売る・解体・国庫帰属
▶
③ 3か月以内に決める放棄なら家庭裁判所へ申述

空き家の4つの道

解体・売る・貸す・持つの比べ方は空き家をどうするかの記事へ

相続する場合の名義

3年の期限と過料(前科のつかない行政上の金銭の負担)は相続登記の義務化の記事へ

壊すといくらか

木造・鉄骨造の相場と内訳は解体費用の相場の記事へ

※手続きの取り扱いは事案によって変わることがあります。手続きの流れは申述先の家庭裁判所で、自分の場合に処分にあたるかどうかは弁護士・司法書士に確かめることができます。

この記事で参考にした資料 (2026年9月13日確認・タップで開く)
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